ある女性建築家の暮らし

設計事務所をしながら、三姉妹を育てています。女性であり仕事をもち子供がいること。悩みの多い毎日について書きとめていきます

14歳少女の神通力:村上春樹から椎名林檎へ

14歳少女といって一番に思い出すのは村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

 
ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

 

14歳のユキは学校に行っていない。

とても美しくて繊細で残酷。

この物語の中で彼女は何かをするわけではなくて、何かをするのは主人公の「ぼく」だけれど、彼女は触媒として彼を導く。

 

はっと気づいたことに、長女は今14歳!

身長165センチは私と同じで、時々びっくりすることするどいことをいう。

「お母さんはどうして大学を出たのに企業に就職しなかったの?」

「それは最近わたしもよく考えることなんだけど、大学を出る時には全くそういう考えはなかったわねー。なぜかしら?」

黄金の10年をすっかり後にして、

kenchikutokurashi.hatenablog.com

私たちが与えた規範から必死ででていこうと反抗的な彼女。

お弁当のおかずに文句をいわれた時には、

「まったくこっちの苦労もしらないで!こどもなんだから!」

と腹立つ一方、大人の世界にむけるまなざしはなかなか独創的で、ちょっと耳を傾けてみると当然だと思っていたことを考え直してみる機会になる。

 

ただ村上春樹わかってるなーと思うのは、そんな時期はあっという間にすぎさることを予見していること。ユキはこれからエネルギーにあふれた女性になっていくのか、それとも綺麗だけれど平凡な女性になっていくのか、いずれにしても14歳少女の神通力はあっという間に失われていくこと。

わたしにもそんな結晶化されたような14歳のころがあったはずなのに。まったく記憶にない。

 

椎名林檎にも14歳ぐらい少女の曲があります

東京事変 - 閃光少女

これは本当にユキのような少女が映像化されていて好きなのですが、

 

椎名林檎わかってるなーと思うのは、神通力を失った後の女の気持ち


椎名林檎 - ありきたりな女

これは子供を産んだことによって、神通力を失った女の歌だと、勝手に思ってます。

 幼い頃から耳を澄ませば本当に小さな音も聞こえて来た…

時という時はそう音楽になり、欲しいものなどなかった。

どれほど強く望もうとも、どれほど深く祈ろうとも、もう聴こえない。

あなたの命を聴きとるため、代わりに失ったわたしのあの素晴らしき世界。

https://www.uta-net.com/song/171787/

 

わたしが覚えているのは、大学に入って建築を勉強し始めた時、これまで理解していたけれど表現することができなかったことすべてを、ここでなら表現できるような気になったこと。あれがわたしの最後の神通力だった気がする。

 

そして今、少女時代をはるかに後にしただけでなく、娘が神通力時代にはいってくるとは、時の流れるのは早いもの。

 

かつて神通力をもっていた先輩として、彼女の神通力がどのような新しい世界を照らすのか、興味深く、注意深く見守りながら、わたしは椎名林檎のように、それを失った自分について自覚的に、客観的に表現していきたい。